第3回 幼児教育における知“脳”教育(前編)|幼児教育・幼児教材の「まいとプロジェクト」

第3回 幼児教育における知“脳”教育(前編)

ごあいさつ

前回は、幼児教育者という専門的な観点から、幼児の「知性」が段階的に発達していくということをお話していただきました。それは、西欧人だろうが東洋人だろうが、女性も男性も、人間ならば誰にも当てはまる脳のメカニズムであり、生前生後の6年6ヶ月がとても重要であると言うことです。
適切な幼児教育とは、まさにこの事を踏まえた教育にほかなりません。「脳」に対してはまんべんなく知性を教育することはもとより、「身体的」には手先の動きや身振りや態度、等々のさまざまな教育が、その子の才能を開花させることに繋がるわけです。
さて、今回のこの談前のコーナーでは前回の「脳のメカニズム」や「臨界期」を踏まえて、子どもの「脳内ネットワーク」の成り立ち、さらには幼児教育の重要性や意義について話を進めていきたいと思います。

はじめに  遺伝か環境か? 知性に影響を与える要因と「脳内ネットワーク」

現代の科学では、「人の知性は遺伝と環境によって決まる」と言われています。 つまり、EQもIQも他の知性(既出)と同じく遺伝と環境によって影響を受けることになります。

では、何パーセントの割合で知性は遺伝するのでしょう?
カエルの子はカエルなのか?
トンビが鷹を生むことはないのか?

諸説色々とありますが、幼児教育の観点からみて私はあまり興味がありません。
例えば、物理学者の子どもは理数に強く、政治家の家系は政治家になり、スポーツ選手の子どもは運動神経が良く、音楽や美術系の子どもは芸術センスが良い。もし、これが50%の確率で全ての人に当てはまるのなら、人は50%の確率で知性や知能は遺伝する、と言えます。

しかし、実際のところ、我々の回りを見渡してみると一概にそうとも言えないようです。
天才と呼ばれた人の子どもが平凡であったり、ごく普通の夫婦から偉大なスポーツ選手が育ったり、また、音楽家の家系ではやはり代々音楽家となったりとバラバラです。
これは一体どういう事なのでしょう?

たとえ、両親が偉大な音楽的知性を持った演奏家でも、その子どもが音楽に無縁に育てば、当たり前だが音楽的知性を伸ばすキッカケも与えられないので、せっかくの才能も開花するわけがありません。逆に、両親の才能は平凡でも、音楽好きで子どもの時から聞いて育てば音楽的才能が開花する確率がぐーんと上がる。

つまり、私たちは人間である以上、遺伝により知性はある程度は左右されるかもしれないが、残りは環境(教育)次第と言うことになります。
人の知性は「遺伝」と「環境」によって決まるのは、逃れられない現実かもしれません。
人は、無意識のうちに遺伝子を我が子に与えている・・・・・。
しかし、意識的に我が子に環境を与える人は少ないのかもしれません・・・・・。
(子どもの立場からすれば、どの様な遺伝子を持つ親だろうが、両親がいなくては生命を得ることが出来ないわけですから文句は無いと思いますが、生命を得た後の幼児環境については、将来自分が親となり我が身を振り返ったときには考えさせられるかもしれません!?)

さて、前回では、ヒトは発達した大きな脳を持つことが出来るように、素晴らしいシステムを持つことを述べました。
頭部、つまり脳が大きくなってからでは狭い産道を通ることができないので、猿なみの脳の大きさで生まれて、その後に飛躍的に発達していく方法です。
つまり未熟な脳のまま出産し、その後で急速に脳が拡大していくのと併せて、「臨界期/感受性期(既出)」という子どもの脳のメカニズムがあると言うことを述べました。
そして、もう1つビックリする事があります。
人類は、生まれた環境から育つ環境に応じて、頭の中の「脳内ネットワーク」を劇的に変化させる、と言うことです。

つまり、、、、、

ヒトで最も良く発達した「大脳皮質(既出)」は、「ニューロン」という神経細胞から出来ていますが誕生と同時に大量に死滅すると言うのです。この大量死は、脳の領域によっても異なりますが、生後1年以内には実に20〜80%にものぼります。しかも、このニューロンは新たに増えることなく減り続けます。(脳の大きさは爆発的に発達するが、その細胞は急速に消滅していくわけです。)
これに逆行して急速に発達するのが、「シナプス(既出)」です。
シナプスは、誕生と同時に急速に形成されていきますが、5〜6歳をピークに今度は急速に消滅していき中学校を卒業する頃には大人並みの密度となり、以後ゆ〜くりと減り続けていくわけです。
つまり、幼児期が、子どもの頭のネットワーク化にはとても重要な時期となるわけです。
ここで、少しニューロンとシナプスについてお話ししましょう。

ヒトの頭の中は、ニューロン(神経細胞)とシナプス(ニューロンとニューロンのつなぎ目)によって、網の目状に「脳内ネットワーク」が構成されています。
いろいろな情報はシグナルとなって脳内ネットワークの中を駆けめぐるが、このシグナルを受け止めるのがニューロンの樹状突起という部分で、いくつものニューロンからシグナルを受け取れるように何本もの枝を広げた形をしています。また、ニューロンはシグナルを発信もするので長い手足を持っていて、これを軸索と言います。
ニューロンの軸索はどんどん伸びていき、目的とする他のニューロンと出会うとその相手の樹状突起と結びつく。このつなぎ目がシナプスです。
多くのニューロンがシナプスを介してつながることで、ある目的のために働く巨大な脳内回路が出来上がります。
1つ1つのニューロンは数千〜数万ものシナプスを持つので、そのネットワーク網はまさに無限と言えるでしょう。

ところが、このシナプスはせっかく出来ても使わないと(情報がシグナルとなってそのルートを使わないでいると)、やがて消失してしまいます。
つまり、刺激のあるシナプスは強化されるので、情報=シグナルを良く通し、脳の活動が活発となりますが、刺激のないシナプスは消失してしまうので、脳内ネットワークに個人差が出ると言うわけです。そして、そのような変化を最も受けやすい時期が幼児期なのです。
また、このシナプスの繋がりは、繰り返すことで確実な配線となっていくので、適切な幼児教育環境も必要となってくるわけです。

このように、幼児教育(刺激)によってシナプスの数は増え、脳内ネットワークは強化されていきます。つまり、シナプスが多ければ多いほど情報伝達が容易になるので、頭が良い、才能が開花すると言ったことにもつながります。
私たちが、何かを考えている時、何かをしようとする時、頭の中の脳内ネットワークでは、ニューロンはシナプスを介して、この情報=シグナルが猛スピードに駆けめぐっています。
ヒトの知性(知能)が「高い」or「低い」は、まさにこのネットワークの強さに他なりません。

さて、このニューロンの大量死とシナプスの急激な形成とその後の消滅は、一体どういう事なのだろうか?

(頭の良し悪しは、情報伝達する脳内ネットワークの出来に左右されることがお分かりいただけたと思います。次回のこのコーナーでは、人類の進化が勝ち取った脳内ネットワーク形成の仕組みについて分かりやすくお話しします。)
さて、今回も長々と小難しい話しから始まりましたので、さっそく対談の方に入っていただきたいと思います。今回も、長年に渡り幼児教育のリーダーとして現場教育に携わり多くの優秀な人材を社会に送り出したるりる〜先生と、「IQ200天才児は母親しだい!」の著者の吉木先生に、面白い&意義ある対談をしてもらいたいと考えています。

幼児教育における「臨界期」って何?(前編)

宮本みきお

よく教育では、「右脳」教育とか「左脳」教育とか言われることがありますが、脳の右脳や左脳は簡単に言うとどういうものなのでしょう?

吉木稔朗先生

右脳は脳で見たまま聞いたまま、感じたままに記憶したり、イメージを抱いたり、情報を取り込む無意識脳(潜在意識脳)です。このような右脳は、音楽・図形感覚・絵画・幾何学に適しているといえましょう。

これに対して左脳は、記憶したり計算したりする意識脳(顕在意識脳)です。言語、観念構成、算術などに適した脳といえます。現在の学校教育は特にこの左脳教育と言われています。言語と論理的思考の左脳記憶学習に偏っているからでしょう。

しかし左脳教育が大切なように、右脳教育も重要です。ことに脳の発達には臨界期があるわけですから、脳を活発に使うことができる幼児期にはことに右脳に働きかけます。そして右脳にインプットされた内容は、左脳によって判断されるなどして、より確かな知識として確立されていきます。

宮本みきお

幼児教育現場からみた、右脳とか左脳とかはどういうものでしょう?

佐藤るり子先生

大脳には「右脳」と「左脳」がありますが、先ほどと別な言い方をすると、右脳とは、感覚を司る脳であり(空間認識力、直感・感情・態度・総合判断・図形認識力・非言語的な感覚など)、左脳とは、知性を司る脳(時間・記憶・分類・論理・計算・分析、単語や文章を生成する領域・単語と概念を結びつける神経回路があり、言語中枢と密接な繋がりがある)に大別されます。

幼児の発達では、右脳も左脳もどちらも大切です。
3歳のクラスでは、お母さんにバラの花を一輪手渡し、これをお子さんに教えてあげるとしたら、どの様に伝えますか?と聞いてみたりします。
「これは、バラの花っていうのよ。」「赤いバラのお花ね。他には黄色やピンク・白や黄緑もあるのよ。」「とげがあるのよ。」「とげに触るとチクチクするね。」「甘い良い匂いね。」「お母さんの大好きなお花よ。」「綺麗ね。」「ツヤツヤしているわね。」など、様々な言葉がお母さんから出てきます。

皆さんは、初めて目にした物を、お子さんにどの様に語りかけますか? 上記の言葉掛けには、左脳中心の教え方と右脳中心の教え方の2つがあるのがおわかりでしょうか?
名前や色・形などを中心として教える知識中心の左脳教育、匂いや感じた気持ちや感覚を教える右脳教育。どちらも大切ではありますが、幼児期は「感覚教育」であると言う事を忘れてはいけません。感覚や感情を通して、情報を脳に送っているわけです。ですから、五感をフルに使うことが大切なのです。
せっかくバラの花があるのに、花を見ただけとか名前を教えただけで終わってしまえば、言語野の刺激だけで終わってしまいます。

幼児「脳」教育とは、見るだけでなく、実際に触ったり匂いを嗅いだりしながら、花の心地よさを感じ、もっと知りたいという興味を持たせ、子ども本来の好奇心を引き出す事が大切なのです。そして最後には、知識として言葉として意識化させていき、脳に定着させていくわけです。

宮本みきお

身近なモノを利用して幼児脳教育が出来る例として、この感覚教育が重要だと言うことですね。右脳教育では、よくカードを利用したりしてますが、どんなものがありますか?

吉木稔朗先生

まずは漢字カードというのがあります。具体的なカードの遊び方を説明しましょう。

漢字カードの遊び方
文房具店で売っている、B6型程度のカードを買ってきて、思いつくままカードに漢字を書きます。マジックの赤で太くしっかりと書きます。思いつくものをどんどん書いていきましょう。「冷蔵庫」「洗濯機」「台所」など身近なものや、「檸檬」「薔薇」などの難しい漢字も、色々と書いてみます。
書いたカードは子供に見せます。長い時間見せる必要はありません。数秒見せて、その言葉をお母さんが発音します。そして次のカードに移ってください。毎日新しいカードを少しずつ増やしていきます。子供はすぐに覚えていきます。
「ひらがなもまだ覚えていないのに、いきなり漢字からなんて、しかも難しい漢字も」と、思われる方もいらっしゃいますが、子供はひらがなより漢字の方が覚えやすいのです。それは論理的に覚えているのではなく、感覚的に映像として覚えているからです。ですから活動している脳は右脳ということになります。漢字は映像として覚えやすいのですが、ひらがなは同じように見えて、映像になりにくいのです。「く」と「し」の違い、「こ」と「に」の違い、「つ」と「う」の違いなど、映像になりにくいため覚えづらいのです。

宮本みきお

右脳が感覚的に漢字を図形映像として認識するというのは、スゴイことですね。
何か他にも身近なカード遊びはありますか?

吉木稔朗先生

絵カードというのもポピュラーです。具体的な遊び方を説明しましょう。

絵カードの遊び方
漢字カードと同じく、カードにどんどん絵や写真を貼って、その名前を覚える遊びです。
鳥や花、身の回りのもの、何でもいいですから絵カードにします。素材は新聞の折込チラシの写真などを活用してはいかがでしょうか。カードの裏に絵の名前を漢字で書けば、絵カードと漢字カードが同時にできます。
もしお子さんが、2歳以上でしたら、絵をはさみで切ったりする作業は、お母さんと一緒に行いましょう。はさみを使うのは大変難しいのですが、難しい動きを行うことによって、脳に刺激がいくので一緒に作業をすることは大変良いことです。

宮本みきお

カード遊び以外では、身近なものを使った役立つ遊びにはどんなものがありますか?

佐藤るり子先生

「箱の中身はなんだろう?」ゲームというものがあります。
4歳以上のクラスでは、箱の中身を見ずに当てるゲームをよくします。経験が多ければ多いほど、脳のなかの情報を取り出して、触った感覚だけで当てる事が出来るようになります。

触ってみて興味を持てば、子どもはそれが何であるかを知りたくなります。教え込むのではなく、子どもの本来持っている好奇心を引き出す事が重要です。
このゲームを楽しめるように、幼い頃から次の様なことを授業の中で多く取り入れています。
それは、様々な「もの」に対しての、初めての出会いをとても大切にしている事です。小さい年齢であればあるほど、見て、触って、匂いを嗅いで、音を聞いて、味見の出来る物は味見をして・・・ということを積極的に取り入れています。

1つ「積み木」を例に挙げましょう。

触って
ゴツゴツしている。堅い。ツルツルしている。チクチクしているところもある。冷たい。重い・軽い。また、0歳〜1歳は口に持って行って確認します。本能的に食べられるかどうかを自分で調べているからです。堅いね。食べられないね。と言葉を掛けます。

落として音を聞く
音がする。積み木の大きさで音が違う。床に落として時とテーブルに落としたときの音が違う。弾む。転がる。音を聞いて、ビックリしたね。ドキッとしたね。楽しい音だね。うるさいね。等。

匂いを嗅いで
何の匂いだろう。木の匂いかな?良い匂いだね。

見て
色が着いていて綺麗だね。何色だろう。着ている洋服と同じ色だね。

身体に落とした積み木が当たったときに
当たると痛いね。と人には投げてはいけない物であると言う事を感覚的に知ります。

そして、最後に「積み木であること」「形に名前がある事」を伝えていく方法です。

宮本みきお

身近なモノを使って、遊びながら感覚教育ができるわけですね。

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対談者プロフィール

吉木稔朗先生

吉木稔朗先生

神奈川大学法学部法律学科卒。早期教育の友人の死を契機に研究を引き継ぎ、現在、ヨシキ幼児教育研究所主催。主たる著書に「IQ200天才児は母親しだい!」「母親だからできる驚異の天才教育」「天才児を育てた24人の母親」などがある。

佐藤るり子先生

佐藤るり子先生

幼児教育学部卒。幼児教育学部専攻科修了。
首都圏の私立幼稚園教諭を経て、大手民間の幼児教育事業部において講師及び教室長を担当。首都圏エリアの運営及び講師育成並びに教育プログラム開発等を手掛ける。現在、幼児才能開発プロジェクト「まいと」専任講師。

宮本みきお

宮本みきお

立教大学経済学部経営学科卒。経営コンサルタント。大手民間の人材バンク及び人材開発の企業を経て、現在、コンサルティングファームを経営。

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